プリンセス革命
子供ってコスプレ好きじゃないですか。
いや、コスプレと言うほどでもないのかな?「キャラクター商品好き」の延長のようなものかもしれません。
我が家は一時期「プリンセスコスプレ」がブームで辟易していた時代がありました。シンデレラのドレスとか白雪姫、エルサのドレスとか…。子供がドレス着て喜ぶ→ばあちゃんがプレゼントする→子供がドレス着て喜ぶ→ばあちゃんが…という魔のシンデレラサイクルによって増えすぎたドレス達。
朝起きるなり「ドレス着る!」と言って聞かない長女。それを見て当然次女も着たがるというシンデレラシナジー。着るのは良いんですけどね、まだ小さい頃だったから朝ご飯で確実に汚すんですよね。それを3食やられるともう・・・。
ドレスが汚れるの共に困ったのが、出掛ける時にも着て行こうとすること。しかも強い決意で。断固たる決意。当然こちらとしてはダメだと言うんですが、もー泣いて泣いて大変。所謂コスプレイヤーの方のような「見せたい」という感情では無く、ただただ着ていたいということのようですが。
僕「ドレス着たままはお出かけ出来ない!おうちにおるねんな?」
娘「おる!」
このパターンもズルいですよね。こっちとしては子供を置いていくわけにはいかないので。プリンセスというより暴君。
そんなこともあって、極力プリンセスドレスを目の届かないところに隠すということを繰り返すことにより、暴君のドレス意識を低下させるという作戦に打って出た民衆(両親)達。一進一退の攻防が続くも、除々に暴君のドレス意識は削がれていき長い戦いは次第に終息を迎える。民衆は静かな幸せを噛み締め、平穏な日々を暮らしていた。
しかし、そんな民衆の小さな幸せも長くは続かなかった。
鬼滅の刃ブームである。
南南東!スーパーの場所は南南東!
暴君が次に目を付けたのは会合(幼稚園)で耳にした「鬼滅の刃」でした。
鬼滅の刃の勢い凄いよね。まぁ騒がれすぎてる感については色々思うところはたくさんありますが僕も完結まで読んでるし映画館にも行きました。
うちの子もプライムビデオで視聴するなりすっかりハマったわけですが、これに乗じてうちの母親が胡蝶しのぶの衣装を買い、炭治郎の衣装を手作りするということがありまして。
有り難いし可愛いんですが、そこからは案の定毎日我が家には鬼殺隊隊士が出没しています。
先日、夕食の食材を買いにスーパーへ行こうと思い、隊士2名に声を掛けるとやはりその隊服のまま任務に行くといい出したのです。ドレス時代から一度も着たまま外出したことは無かったんですが、その日はなんかもう良いかと思って初めてそのまま外出することに。スーパーは歩いて3分だし、めっちゃ小さいスーパーだし、朝から色々子供に怒りすぎて気の毒だったし。
あるよね、気持ちのバランスを気遣うこと。自分に対してもだけど。
初任務である。
うちの近所はけっこう高齢の方が多いせいか、買い物中も温かい目で見つめてもらってたと思うんですよ。あの年齢の方々っていつも孫を見るような感じで接してくれるのですごい優しいのね。
ただ、同年代の親子がいてお子さんが「ママ、鬼滅や!あれ欲しい!」と騒いでたのは申し訳ないね。お母さん、家で説得頑張って下さい。
帰りはネギを持ってもらってたんですけど、子供に長物を持たせると自動的に刀になるもので、見事な殺陣を披露してくれました。
ネギだけど。
「お館様の前だぞ」すな。
拾壱ノ型「葱」すな。
「お館様の前だぞ」×2すな。
そんないつの間にか撮影会になっていた僕達のところへ、おばあちゃん二人組がニコニコとこちらにやって来ました。
「あらー!かわいいお姉ちゃんと妹ちゃんだねー!その服は何か習い事?」
あぁ、違うんですよ。羽織を着てるもんだから何か舞踊のようなものの習い事と勘違いしてるご様子。ネギ振って踊ってるだけなんでそんな高尚なものではございません。
とはいえ、なんと説明しようか。まず大ヒットアニメ「鬼滅の刃」自体を知らないことはわかった。そうなると「コスプレ」という単語を理解してもらえるのかも怪しい。
そして僕がお伝えしたのは「アニメのマネしてるんですよー。」ということ。些か省略しすぎかもしれませんがシンプルイズベストである。日本的に言うなら侘び寂びの心である。
そしてそれを聞いたおばあちゃんが相変わらずニコニコしながら「あーアンパンマンみたいな何かかなー?」と仰られました。
うーん…アンパンマン…みたいでは無いな!おばあちゃん的には子供の見るアニメ=アンパンマンが基準となっているようなので已む無しではあるのですが全然ちげー。まぁ鬼滅自体がそもそも本来は子供向けでは無いと思うのでしょうがないよね。
とは言え「いえいえそうでは無く鬼滅の刃という、悪い鬼に妹を鬼にされてしまってですね…」と説明したところで「あー桃太郎みたいな何かね?」と言われて余計に鬼滅から離れてしまいそうなのでそれは辞めた。
何て言おうかなーと思ってると、お連れのおばあちゃんBが「今の子はアンパンマンとかそんなに見ないんじゃないかしら?着物着てるし、ドラえもんとかじゃない?」と仰られた。
うーん…ドラえもん…みたいでは無いな!というか僕的には着物→ドラえもんの連想が全くわからないんですが。アンパンマンよりは現実的かつ日本が舞台で8ミリ位は鬼滅に近づいたのかもしれませんが。
そんなわけで僕はもうおばあちゃんBに乗っかろうと思い「そうですねードラえもんみたいなやつですねー!」と言い切った。これで良かったのだ。優しい嘘というものは存在するのだ。僕はこの瞬間は娘達がドラえもんのようなアニメのマネをしているという暗示を自分にかけることにした。
そこからはおばあちゃんAもBも子供達に「いくつなのー?」とか「立派な服着させてもらってるねー?」とか話し掛けてた。子供達も恥ずかしそうにしながらも、可愛いと言ってもらえたり大好きな鬼滅の衣装を褒められたりしてとても嬉しそうでした。
暫く会話していて、二人もそろそろ立ち去る感じの時におばあちゃんBが僕にこんなことを言ってきた。
「今って色んなテレビがあるでしょう?おもちゃとか服とかもたくさん出てて買うのもお金がかかってしょうがないんじゃない?今、鬼滅の刃とかずっとテレビでしてるじゃない?」
鬼滅の刃とかずっとテレビでしてるじゃない!?
ええ、してますとも!えぇ!?
驚きすぎて「そうそう、その鬼滅です!」って言いそびれて「そうですねー」しか言えなかったもん。というか完全に「ドラえもんのような何か」のていで話合わせてたから今更言えないよね。
それでおばあちゃんAとBとサヨナラしたんですけど、ほんと「これモニタリング?」って思ってキョロキョロしたもんね。
おわりに
たぶん鬼滅鬼滅ってテレビで見るけど、どんなものか記憶してないから目の前の子供達とリンクしなかったんでしょうね…。僕も何度もテレビで見た乃木坂46の顔を誰一人として覚えられないんだからそんなものなんでしょう。
とは言え、すごい反応に困ったわ。
おばあちゃんAとBがある日、鬼滅をしっかり見て「あれ、あの時の子供…ドラえもん関係無いジャン」ってならないように願うばかりです。
おわり。