みんな集まれ半蔵門

子供の事とか映画の事とか戯言とか

でんせつのようちえんスベリ

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急に暖かくなってきてご機嫌の半蔵です。

 

長女が年長さんにあがってから、幼稚園では一カ月に一回ぐらいのペースで「保護者が絵本の読み聞かせをする」っていうイベントがありまして。

そんな楽し気なイベントなんですが他の方の都合が合わなかったようで、我が半蔵家は2回読み聞かせ当番に当たることになりました。

しかも2回目は卒園間近の「最後の読み聞かせ日」という大役。

先日、そんな読み聞かせに僕が馳せ参じたお話。

決起

半蔵家の読み聞かせ一回目は、夏頃に奥さんが行って「つるちゃんとクネクネのやまのぼり」という本を読んできました。

アザラシのつるちゃんは、山から流れてきたナメクジのクネクネを助けます。クネクネを山の家まで送り届けようとふたりで山登りをはじめます。強い日差しが照りつける中、ふたりは励ましあって山を登りますが・・・。
-文溪堂/内容紹介より-

 

アザラシとナメクジという組み合わせがまず面白いですが、可愛い絵柄ながらも水場が無くてどんどんフラフラガリガリになっていく姿は子供達にもわかりやすく面白い。逆にそんな身を削りながらも家を探す優しさも描かれており素敵な絵本です。


奥さんと長女曰く、読み聞かせ会の様子は「クスクス笑いがあったけど、みんな堪えてる感じ」とのこと。
なるほどね。みんなちょっと変に気を遣ってる感じかな。

 

奥さんの読み聞かせを終えて、長女が何を思ったのか「2回目はパパに来て欲しい」と突然のドラフト1位指名。

 

「第一回選択希望選手、長女ファイターズ、半蔵、34歳、経営企画部門、大阪某法人」


まさかの希望球団から指名だったので尋常じゃなく嬉しかったわけですが、そこは(変な)父のプライドが「ま、まぁ、ええけど?」という回答にさせるから不思議。

そして、ええかっこしいの僕としては「園児達から拍手喝采→長女ちゃんのパパ最高、羨ましい→長女からの評価上昇→先生から奥さんに当日のスタンディングオベーションを共有→奥さんから評価高騰」というビジョンを描かざる得ませんでした。

 

作戦会議

そんな一大プロジェクトの成功の鍵を握るのはやはり絵本選びでしょう。


プロジェクトリーダーとしてはまず、ユーザーに何を訴求するのか、という観点で方向性を考えたうえで本選びをすることとしました。

 

100万回生きた猫

プラン1としては「思い入れのある本を読む」というコンセプト。

今回のプロジェクト自体は幼稚園の同じクラスの子達全員に本を読むわけですが、僕としてはやはり指名してくれた長女を一番に喜ばせたいと思ってしまうのは仕方が無いところ。そこで僕が思い浮かんだ本が「100万回生きた猫」という本。

100万年も しなない ねこが いました。
100万回も しんで,100万回も 生きたのです。
りっぱな とらねこでした。
100万人の 人が, そのねこを かわいがり, 100万人の 人が, そのねこが しんだとき なきました。
ねこは, 1回も なきませんでした。

-amazon/商品紹介より-

 

めちゃくちゃ有名な本なのでご存じの方も多いと思いますが、この本は長女がまだ0歳の頃に「人生で初めての絵本」として購入し、プレゼントした本なのです。

そんな家族として思い入れのある本を、娘の幼稚園で読む…。ストーリーとしては綺麗だとは思うんですが、物語の大半が「猫が何度も死んでしまう」という少し暗い話だし、長女も含めて年長さんにこの絵本の本質が理解出来るかという点が懸念。というかうちの長女の反応がイマイチだったんよ。

 

絵本を読むことって、年齢によってその時々で感じる、考えることが大事だと思うので全然それでも良いと思うんですが、今回のプロジェクトに限っては1回限りの大勝負なわけです。

「なんかよくわかんなかったけど長女ちゃんのパパの絵本面白くなかったね」と言われたら長女に申し訳ないじゃない?

「すごく良いお話しだった!」ってわかってくれる子達も絶対いるとは思うけど、奥さんが行った時の空気感を聞いてる感じだと、それも照れて言いにくい気がするし。

いや、本当にむちゃくちゃ良い絵本なんですけどね。

 

がっこうだってどきどきしてる

プラン2としては「今の状況にマッチした本を読む」というコンセプト。

今回僕が絵本を読むタイミングは卒園間近…つまり小学校入学前の子供達へ本を読むわけです。
そこで僕が選んだ絵本が「がっこうだってどきどきしてる」という絵本。

はじめてのクラス、はじめての学校、みんなどきどきするものだけど……学校だってどきどきしてるって知っていた?
学校がちょっぴり怖い子、苦手な子、いやだなあと思う子たちへ――こんな学校だったら、ちょっと面白いんじゃない?

-amazon/商品紹介より-

 

新しい環境に旅立っていく子供達に、実はみんな不安なんだよ?でも頑張って行ってみると楽しいことがいっぱいかもよ。というメッセージが乗せれれば良いと思うんですよ。いや、めちゃくちゃ良い作戦ですよね?

 

でもね、これ不安だけが残ったらどうしよう…。むしろ小学校に不安を持ってなかった子に考えもしなかったマイナスイメージだけ与えてしまったらどうしようか…僕に不安がよぎります。

 

すごく良い本だし、タイミング的にも良い本だとは思うんだけど…安牌じゃない気がしてきた。

 

でんせつのじゃんけんバトル

プラン3としては「とにかく笑ってもらう」というコンセプト。

シンプルイズベスト。

力こそパワー。

 

というのも、別の月に行かれたお母さんが「パンどろぼう」という絵本を読んで大爆笑だったそうなんですよ。それを考えると僕がパターン2のような戦略を取って園児達の心に響いたとしても「でも○○君のお母さんの方がおもしろかったね」ってなりそうじゃないですか。

 

僕はあの人に勝ちたい!

 

アムロが青い巨星ランバ・ラルに対して抱いたあの気持ちと同じです。

孫子のおっさんも(孫子は人名では無いが)敵を知っておけば戦いはええ感じになる、って言ってたので僕は「パンどろぼう」を本屋に探しに行ったんですが…

 

たしかにこれはウケるわ。

 

まちのパンやから サササッととびだす ひとつのかげ。
パンがパンをかついで にげていきます。
「おれはパンどろぼう。おいしいパンをさがしもとめる おおどろぼうさ」

パンに包まれた、その正体とは――!?
お茶目で憎めないパンどろぼうが、今日も事件をまきおこす!

-amazon/商品紹介より-

 

話のテンポも長さもちょうど良く、見開きを使った笑えるシーンも「ここでウケたんだろうな」と感じさせる本。

悔しい。むしろこれを読みたかった。

 


というわけで僕が「笑い重視」で選んだ本がコチラ。

「でんせつのじゃんけんバトル」という本。

アメリカで20万部突破の大ヒット絵本がやってきた!

君はじゃんけんの伝説を知っている? 腕におぼえのある石と紙とはさみ…。3勇者が出会って壮絶なバトルが繰り広げられたあの話を。
世界で最も普及して愛される遊び「じゃんけん」をテーマにした痛快&ちょっとおバカなバトル絵本が、中川ひろたかのリズミカルな訳でついに日本上陸! ! 子どもたちが声をたてて笑います!

-amazon/商品紹介より-

 

いや、もうこれで絶対勝ちでしょう?

アメリカで大ヒットだぜ?幼稚園中がHAHAHAHAHAHA!!ってなる保証書付きみたいなもんじゃん。

 

実際読んでみると他の絵本とは少し毛色の違った「笑い」に振り切った本の構成と「勢い」が特徴的な本でした。

物語はグー・チョキ・パーを模した「グリグリ」「チョッキーナ」「パーペ」の戦いを面白おかしく描いたものなんですが、この3人が出会うまでの道中に、グーのグリグリが「洗濯バサミ」と「杏の実」との戦いが描かれています。

 

洗濯バサミは洗濯物の「パンツ」を挟んでいるし、杏の実はその形から「産毛の生えたお尻」と呼ばれています。

 

絶対ウケるやん。

 

年長とはいえ、まだまだうんち・パンツ・おしりで笑いますからね。

いや、うちの子がそうなので。

 

そんなわけで僕はこの「でんせつのじゃんけんバトル」に全ての命運を委ねることにしました。

 

決戦

そして遂に決戦の日、ばっちり有給を取って戦場に向かいました。

教室に招き入れられ、僕は教室の前の小さなイスに腰掛け、園児達は小山座りで待機してくれました。

 

ドキドキしながらも絵本をめくり、読み聞かせを始める僕。

 

そしてファーストお笑いポイント。

「パンツをくわえた洗濯ばさみ」のくだり。

 

僕は笑いを誘うように「パンツ」を少しふざけた感じで読んでみた。

 

驚いた。

 

誰も笑っていない。

 

 

ウソだろ?みんなの大好きな「パンツ」だよ?むしろ更に笑えるようにおじさんはトボけた感じで「パンツ」って言ったよ?フォントにすると「うずらフォント」みたいな感じで読んだよ?

 

そして、セカンドお笑いポイント。

「産毛の生えたお尻」のくだり。

 

 

全然笑いが起こらない。

 

ウソだろ。

「あんずもじフォント」みたいな読み方もしたよ?

 

笑いに振り切った絵本を持ってきて何の笑いも起こらない状況。

マジかこれ。

これならしんみり絵本を読んで笑い0の方が2万倍良かった。

ウケなさすぎてマジで変な汗が出てきて、僕のGUのパーカーはもうぐっしょぐしょ。

 

お笑い芸人の人って、自分達で「面白い」と思った漫才の台本を書いて、更に面白くするために稽古をして、どや面白いやろーって舞台で披露してくっそスベる時ってあるんですよね。その精神力ってすげーなぁ…。

そんなことを思いながらページをめくるライフ0のドラ1の僕。
そういえばドラ1は大成しないとか言われますもんねー。
はは。。。

 

物語終盤についにグー・チョキ・パー達が勝負をするんですけど、冷え切った会場に耐えかねて、僕は客席との会話に逃げます。

グーのグリグリとチョキのチョッキンナとの対決では、絵本には書いてませんが「どっちが勝つのかな~?」と子供達に問いかける(助けを乞う)僕。


そうすると当然、子供達は
「グリグリー!」
「グーとチョキだからグーが勝ち!」
「絶対グリグリ!」
と大盛り上がり。

 

あぁ、盛り上がったが絵本読みとしては絶対邪道だコレ。

絵本読んでて自然にこの声が上がれば良かったと思うけど、めちゃくちゃ誘導していますからね。


チョッキンナに勝ったグリグリがパーのパーペに負けたことで、パーペが「僕が最強?」とか言うんですけど、そこで僕は子供達に第二の矢を放つ。


「あれぇ?本当にパーペが一番強いのかなぁ?」

 

僕は完全に絵本のダークサイドに堕ちました。

ごめんなさいオビ=ワン・ケノービ。

コナンばりのわざとらしい「あれぇ?」が腹立たしい。

 

「違うよパーペはチョッキンナに負ける!」

「勝つのもいるし負けるのもいるよ!」

客席は湧くものの、落ち込む僕。

 

あぁ、先生。

後ろの席で「こいつ逃げたな」という目はやめて下さい。

こうでもしないと僕の心は保てそうにないんです。

(被害妄想)

 

おわりに

ということで僕の心がチョッキンナになった読み聞かせ会でした。

長女に良いところ見せられなかったのは残念でしたが、読み聞かせ前後で幼稚園の活動風景を見学出来てとても良かったです。

 

ちなみに後に長女の友達が僕の読み聞かせについての感想を

「すごいおもしろかったけど、わらうところはなかった」

と述べていたそうです。

 

笑ってくれ。