GUって便利ですよね。
我が家も度々お世話になっています。
先日、家族で近所のGUへと繰り出したんですよ。日曜日ではあったものの、店内は割と空いててラッキーでした。
僕は店内をぐるりと一周したのちに、3点ほど持って試着室に向かいました。
試着室の手前には、40代前半と思わしき夫婦が立っていました。
旦那さんは、どこか「妻の言うことには逆らえない」と顔に書いてあるかのような、悟りを開いた仏頂面。奥さんは、まるで「個性的なファッションコーディネーター」…の「候補生」のような、気合が入りながらもなんだか空回り感のあるコーディネート。
ひと目見て、奥さんが全て服を選んでいる夫婦の日常が目に浮かびました。
幸いにも試着室は空いていて、僕らもその夫婦も、待ち時間なくそのまま案内してもらえたので、僕達はカーテンを閉め、試着を始めました。
ふと、隣の試着室から会話が聞こえてきたんです。
どうやら試着しているのは旦那さんだけで、やはり奥さんが選んだ服を彼に着せているらしい。
旦那さんの試着が終わりを告げると、マダムのファッションチェックが始まりました。
「丈感もシルエットもちょうど良いわね」
「テーパードパンツと合わせた方が良いかもしれないわね」
マダムから、妙に自信に満ちていて、それでいてどこかで聞いたようなファッション用語がマシンガンのように飛び出します。
その語り口はまるで、覚えたばかりのビジネス用語をやたらと使いたがる新卒のよう。
付け焼き刃の知識を反芻し、それを「ファッションを知り尽くした私」というブランディングに繋げようとする、そのいじらしさというか、なんというか。
そして、それを店員さんに見せつけるかのように語るんですよね。
気になる女子に聞こえるように教室で大声でボケる男子かお前は。
間の悪いことに、この時の試着室、なぜかガラガラだったんですよ。
マダムの溢れんばかりのファッション知識(1年目)のシャワーを浴びせるには、これほど絶好のチャンスはないとばかりに、店員さんを捕まえて質問攻めを始めていました。
しかし現実は非情でした。
マダムのボロが出るのも早かったです。
マダム「このズボンっ…パンツってたぶん今売れてますよね?」
「ズボン」と言いかけて、慌てて「パンツ」と言い直したマダム。その瞬間、僕は思わず吹き出しそうになりましたね。
おそらく、マダムの中では「ズボン」はダサい言葉で、「パンツ」こそがイケてる人が使うファッション用語、という認識なんでしょう。
ということが昨日見たファッションサイトに書いてあったのかもしれません。
しかし店員さんは、プロですね。
何事もなかったかのように
「そうですね〜、今このパンツがかなり人気ですね〜」と、にこやかに答えていました。
マダムの自尊心を上げ上げにする、パーフェクトな回答。良かったね、マダム。
これで今夜は枕を高くして眠れるよ。まあ、店頭のマネキンが履いてて、明らかに売り出してる感じはありましたけどね。だからこそマダムも手に取ったんでしょうけど。
気分を良くしたマダムは、さらに店員さんに仕掛けます。
マダム「黒が無難にかっこいいとは思うけど、今は明るめのズボン…パンツが欲しいのよね!」
何故すぐ間違うのか。
付け焼き刃の知識だからそうなるんだよ、マダム。
(見えてないけど)流石に店員さんも気まずかったでしょうね。その後のやり取りはなんだかギクシャクしていました。
GUはプチプラでありながら、最近のトレンドをおさえた商品を展開する庶民の味方。我が家も大変お世話になっていますし、これからもお世話になるでしょう。
でもマダム。
僕の個人的な感覚としては、GUはイキり倒すブランドとも違う気がするんです。
ガストでステーキ頼んで店員さんに、サシのバランスがどうとか語り出してるようなチグハグな時間でした。
ファッションは誰かに見せつけたり、マウントを取ったりするものじゃない。
そう、心に刻み込んだ珍事でした。