みんな集まれ半蔵門

子供の事とか映画の事とか戯言とか

修学旅行は少年少女達を少し大人にさせる

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今週のお題「修学旅行の思い出」

 

僕が修学旅行と聞いて思い出すのは、小学校の修学旅行。

その中でも印象深い、3つの出来事についてお話ししたい。

 

 

「コクる」という文化 

修学旅行1日目の夜だったろうか、ある部屋で男子も女子も複数名が集まり、「UNO」が開催されていた。

しかしこのUNOには、ある特殊ルールが設けられていた。

 

負けた人は好きな人に告白する

 

という、よくある罰ゲームだが、当時は「何だその恐ろしい罰!?」と驚いたものだ。

 

僕も皆とワイワイやりたかったが、好きな人がいない(=告白する相手がいない)僕は、残念ながら参加資格が無かった。

というか初恋もまだだった。

 

誘われて

「俺、好きな人おらんからなー」

と言うと

「えー?ビビっとん??」

と言われる始末。

 

ほんとにいない、という事は証明しようがない。

挫折を味わった12の夜。

 

そんな訳で参加資格を持った十数名以外は部屋を閉め出されることに。

 

参加資格の無い僕にとってその閉ざされた部屋は、さながらVIPルームのように思えた。

 

そして僕が何より驚いたのは

みんな好きな人おるん!?

ということだった。

そんな素振りなかったのに。

 

   

ビビりのレッテルを貼られつつもみんな大人だな~とか思いながら、VIP会員でない僕は、仕方なく別室で平民(好きな人がいない、若しくはビビり)同士UNOをして過ごしていた。

但し、この平民部屋UNOの罰ゲームは、負けたら全員からデコピンされるという、何とも少年らしい罰ゲームだった。

 

ただ、

すげー盛り上がったけど。

 

 

そんな夜の翌日の夜だったと思う。

 

クラスメイトの色白の小田さん(仮名)が僕に告白してくれたのだ。

小田さんとは会話をしたことすらなく驚きだった。

 

ただ、残念なことに、初恋すらまだな僕には、小田さんの言う「好き」「付き合って下さい」というものがピンとこなかったので、お断りしたのだった。

 

特に「付き合う」ということが何をするのかがよくわからなかった。

今思えば小田さんは小学生であっても「好きな人と一緒にいたい、会いたい」という感情を持ってくれていたのだろう。

 

得てして、この時期の子供達は女の子の方がませているものだ。

その辺は女の子は少女漫画から影響されるのだろうか?

 

僕がその頃読んでいた漫画といえば

 

花さか天使テンテンくんとか

そりゃダメだぜ。

 

そんなこんなでお断りした僕でしたが、翌日友人の中田くん(仮名)が話しかけてきた。

 

「半蔵!小田にコクられたんやろ!?」

 

・・・

 

コクられた?

 

何だそれ?

 

小田さんには昨日、告白されたけど・・・

 

それ以外は・・・

 

 

あぁ!

 

「コクられた」って「告られた」か!?

 

この間、実に0.8秒。

僕の頭がフル回転したことを覚えている。

 

そして僕が中田くんに返した言葉は

 

「まぁ、告られたけど」

 

It's cool!

 

さも知っていた言葉のように聞き!

みんな使ってるよなとばかりに自分のセリフに流用したぜ!

 

今でこそ「略語」が普通に使われているが

(何でもかんでも略しすぎ感はあるが)

当時はそんな風潮なかったもんだから、この「告る」という言葉は中々の衝撃だった。

 

そして見渡せば多くの同級生が、誰に告っただの誰が誰に告っただの騒いでいて

「告る」のバーゲンセールになっていた。

 

なんだろう

 

みんなそんな言葉、前から知ってた!?

 

すごい知ったかぶり感を覚えた12の昼。

 

ものすごく悪い事をしてしまった

告るのバーゲンセールにうんざりしていた僕に、家が近い藤田さん(仮名)が話しかけてきた。

 

「半蔵、私この修学旅行で土橋くん(仮名)に告りたいねん」

お前もか藤田。

 

ただ藤田さんは、罰ゲームによる告白では無く、純粋に天パの土橋くんに告白したいということだった。

というのも藤田さんが土橋くんを好きなのは学年中が知っていて(何故だったんだろう?)、はっきりさせたいという思いだったのだろう。

 

僕は土橋くんとは仲が良く、修学旅行でも同じ部屋になっていた。

そこで僕は同じ部屋の仲間達に(藤田さんの承認を得て)藤田さんの決意を説明し、二人きりを演出する作戦を立てた。

 

そして作戦は決行され、僕達は隣の部屋で待機することとなった。

 

ソワソワする小学生達だったが、ある1人の男がとんでも無いことを言い出した。

 

「壁に耳あてたら聞こえるんちゃうん!?」

 

鼻垂れの清原(仮名)よ、何を言い出すのだ。

それはダメだろう。

 

しかしそこはノリだけで生きている男子小学生、みんなが壁に張り付いた。

 

僕は最初は「やめとけよー」と言っていたものの、結局みんなの楽しそうな顔につられてしまった。

 

そして僕は壁に耳を当て、耳を澄ました。

 

・・・

 

何も聞こえない。

 

なんだ聞こないじゃないか。

 

 

 

と思った、その時

 

 

 

部屋の扉が開き、藤田さんが僕を見ていた。

 

 

 

 

ヤバい

 

 

そう思った時には藤田さんは泣いて走り去ってしまった。

 

部屋にいる全員が言葉を失った。

 

みんな藤田さんの告白をバカにするわけでも、本当に盗み聞きをしたかったわけじゃないだろう。

 

だけどみんな自分のした浅はかな行為が、確実に藤田さんを傷つけてしまったことを理解していた。

 

翌朝、僕は朝食の時間に藤田さんの席へ行き、昨夜のことを謝った。

 

しかし藤田さんは僕の顔を見ずに、下を向いたままだった。

 

そして、暫くして、下を向いたまま僕にこう言った。

 

 

「信じとったのに」

 

 

そう言うと藤田さんはその場で泣いてしまった。

 

泣いている藤田さんを見て先生が駆け寄って来た。

「藤田どうしたんや!?」

藤田さんは何も言わない。

 

 

そして僕も、何も言えなかった。

 

「昨日、藤田さんが告白して~」とか言えないので、どう説明していいのかわからなかったし、「先生に怒られる」という感情があったようにも思う。

 

先生も当時優等生だった僕が原因とは思いもしなかったのか、何も追及されず、僕は部屋に帰らされた。

 

この出来事は僕にとって「罪の意識」「後悔」といった感情を覚えさせた。

 

藤田さんとは特別仲が良かったわけでは無いが、それでも僕を信頼して頼ってくれたのに。

僕はその気持ちを裏切ったのだ。

 

結局、修学旅行の後、藤田さんと仲直りし、普通に話しをしてくれるようになったが、本当に深く反省させられる出来事だった。

 

友情に泣いた夜 

色々な出来事があり、修学旅行最後の夜を迎えていた。

 

部屋のみんなと「今日で終わりやな~」とか言って、ベラベラ喋って最後の夜を過ごしていた。

 

すると急に、声の高い外村くん(仮名)が急に泣き出したのだ。

外村くん自身も何故涙が出るのかわかっていないようだったが、友人達と過ごす最後の夜というシチュエーションに感極まったのだろう。

 

まぁ、明日以降も学校で会うのだが。

 

しかし、僕もそんな外村くんの様子を見ていると貰い泣きしてしまった。

 

そしてそれは部屋の全員に伝染し、全員が泣いているという、ちょっとすごい状態になっていた。

 

1人

鼻水垂らしの清原を除いて・・・

 

僕らは最後の夜に全員で泣いている状態に、何か熱い友情を感じていた。

 

そこに、1人欠片も泣いていない清原が、驚きの言葉を放った。

 

 

「俺、今から誰の涙が1番しょっぱいか調べるわ」

 

 

何なんだそれ?

 

この雰囲気でよくそれ言えたね。

 

この事件の数年後、世間では「KY(空気読めない)」という言葉が流行ったけど、そうえば彼の本名のイニシャルも「K.Y」だった。

 

何か運命を感じる。

 

最後に 

結局、修学旅行だとか課外授業だとかで、大仏見に行ったり、原爆ドーム見に行ったりするけど、この頃の子供達が成長するのはそういうことじゃないんでしょうね。 

(勿論、歴史を知ることは大事だと思いますが)

 

友人達と共同作業をする、同じ時間を過ごす。

そういうことが少年少女達の心を大きく成長させるんでしょう。

 

僕自身、すごく悪いことをしてしまった経験のある修学旅行。

「何気ないことで人を傷つけてしまう」

それは子供にもしっかり伝えたいと思うのです。

 

おわり。