
怯える音痴
「次、二次会はカラオケ行こうぜ!」
その瞬間、僕の頭の中にロマサガ3の「ラストバトル」が流れる。
飲み会の先に待ち受けるラスボス。
飲み会が楽しければ楽しいほど、この展開が怖くなる。
なんだったら僕は飲み会に誘われた時点でこの展開に怯えているわけである。
僕にとってカラオケは飲み会を無に帰する「破壊するもの」であり、カラオケボックスに向かうエレベーターは絶望のアビスゲートと言っても過言ではないだろう。
僕は音痴だ。故に、カラオケが心底楽しくない。
1次会の居酒屋での僕はイキイキとしている。決してお酒は強い方では無いが、人並みに飲めるので臨機応変に振る舞える余力もある。
プライベートでの飲み会はただただ楽しいし、実体験として仕事を円滑に進めるうえでも「飲みニケーション」に助けられたこともあり、出来るだけ飲み会は参加した方が良いとも思っている派です。
若かりし頃、会社の飲み会での出来事。
2時間制の飲み放題も終わり、お店からお会計を促された頃、誰かがこう言う
「じゃあ、とりあえず二次会はカラオケ行きましょうか!」
完全なるバッドエンド。
通常のゲームオーバーの画面ではなく、ラスボス戦で負けた場合の特殊演出で世界が崩壊する様が脳裏に浮かぶ。
「とりあえず」じゃねぇよ。気軽にカラオケをセットメニューに組み込むな。思考停止野郎が。
酒の強い僕では無いが、二次会も全然「飲み直し」で良い。
吐くまで飲んでも良い。明日二日酔いで寝込んでも良い。兎にも角にもカラオケに行きたくないのだ。
そんな時、A部長が言う。
「いや…今日はちょっと俺の店に行こうか?」
起死回生の閃きシステム。歓喜の乱れ雪月花。
僕にはA部長がヤーマスの町に現れる謎の正義の味方、怪傑ロビンに見えた。
アビスを免れた僕は尻尾を降ってA部長について行く。なんだったら一生ついていきます。
どこに行くんでしょうか?カウンターで飲むようなバーでしょうか。それが良い。皆で明日の会社の未来について語り合おうじゃないですか。
で、着いたのが
カラオケ付きスナック
ふざけんなよA。
「真・破壊するもの」じゃねぇかよ。
てめぇはロビンはロビンでもロビン(太)の方だったわ。
ライトニングピアスを駆使する方じゃなくてスクリュードライバーの方のやつ。
絶対てめーにはついて行かねぇ。
カラオケ嫌いは2000%人生損してる
カラオケ嫌いは2000%人生損してる。
苦手な食べ物の話をすると「えー?絶対人生の半分損してるよー」と、絶対そんなことは無い珍妙なことを言う輩がいるが、このカラオケ嫌いはマジで人生の半分損している。
美味しさを知らない、とか、楽しさを知らない、とかそんなレベルの話をしたいのではない。
カラオケ嫌いは確実に人間(特に若者)の行動範囲を狭めるのだ。
カラオケ行かない、だけならまだしも、僕のように「飲み会の後のカラオケを恐れる」状態が最悪である。実際僕はこれで飲み会自体を断った経験もある。
これにより交友関係の構築…もっと言えば婚期を逃す恐れすらある。
幸いにして僕は「合コン」というほぼカラオケと同義語のシステムに頼ることなく奇跡的に妻と付き合い、結婚し今に至っているが、この奇跡が無ければ「合コン」で「カラオケ」を繰り返していたかと思うとゾッとする。
結婚はさておき、カラオケ嫌いよりもカラオケ好きの方が絶対に得なので、子供たちにはこんな惨めな思いをして欲しくないと思っている。
子供たちに「今のうちにしっかり勉強しなさい」「大学ぐらい出ておかないとダメだ」とか言うセリフ以上に「カラオケは楽しいもんだぞ!」と頑張って刷り込もうと思っている今日この頃。
そんなわけで明日は妻と子供達の3人でカラオケに行く予定です。
僕ですか?
パパは留守番です。
カラオケ嫌いなんすよ。
